一般に性同一性障害(Gender Identity Disorder=G.I.D)とは、生物学的概念として男女いずれかの身体形状に属す身体を持つにも拘らず、性に関する自己認識(自分が男であるのか女 であるのかという自己意識)と、出生時に判別される外性器ないしこれに由来する身体の性別とが一致しない状態にあることをいいます。性同一性障害は同性愛 と混同されることがありますが、同性愛が,もっぱら性的指向が異性に向かず同性に向かう状態のことを指すのに対して、性同一性障害は性に対する自己認識自 体が身体的性別と合致しておらず、その結果として性的指向にも影響がもたらされることが多いという点で、両者は異なるものです。
性同一性障害であっても、その症状の軽重は個々のケースによって異なり、自己の外性器に対する違和感の程度が比較的軽い場合には、異性装(クロス・ドレッ シング)を行うことで耐えられることもあります。しかし、自己の外性器に対する違和感・嫌悪感が非常に強く、耐え難い場合には外科的処置が必要となること があります。
G.I.Dの方は精神的な性別と身体的な性別とが一致しないため、その悩みは深刻であり、少しでも早く自己の身体的な性別を自己の認識する性別に合致させたい、近づけたいと切望されています。当院では、手術代金が高額であるために外科的処置を諦めざるを得ないというケースが少しでもなくなってほしいという思いから、FTMの方に対する乳腺除去手術あるいはMTFの方に対する睾丸除去手術については、可能な限りリーズナブルな価格で行っています。
乳房は乳腺および乳腺周囲の脂肪組織によって作られています。したがって、乳房を切除するためには乳腺周囲の脂肪吸引と乳腺切除が必要です。乳腺周囲の脂肪組織は脇の部位から細いカニューレという管を挿入して脂肪を吸引します。また、乳腺は乳輪下半分を切開して摘出します。FTMの方にのみ行う手術です。
約70%の方は術後に皮膚の弛みが生じることなくフラットなバストになりますが、元々かなり乳房が大きい方や乳房が下垂している方は皮膚の弛みが生じます。このような場合には血液循環が改善する時期まで経過観察をして皮膚切除を考慮します。
麻酔は背中の上方から針を刺して麻酔液を注入する胸部硬膜外麻酔と点滴から鎮静させる薬剤を注入する静脈麻酔との併用です。
手術時間は2時間から4時間と元々のバストの状態によって異なります。術後は乳房手術部位にドレーンという管を挿入し、内部の溜まった血液や体液を排出します。このドレーンという管は1日~数日留置します。したがって、帰宅時はドレーンを挿入した状態で帰宅していただきます。翌日診察に来ていただき問題がないことを確認してドレーンを抜去しますが、脂肪吸引も併用している場合はさらに数日ドレーンを留置します。
睾丸は陰嚢内に左右存在します。精子を運ぶ管である精管と動静脈および睾丸導帯が睾丸に結合しています。したがって、精管および動静脈を切り離し、睾丸導帯を切開すれば睾丸を摘出できます。陰嚢の中央部の縫線を2~3センチ切開し、左右の睾丸を摘出します。縫合は溶ける糸を使用するので抜糸の必要はありません。MTFの方にのみ行う手術です。
乳房切除後の方で数ヶ月経っても皮膚に弛みが多い場合や乳頭の大きさが気になる場合は乳房皮膚切除や乳頭縮小術を検討する必要があります。
睾丸摘出術後、陰茎切断や外陰部形成術を希望される場合は性転換手術を検討する必要があります。ただ、膣の形成を希望される場合は入院治療や長期の経過処置が必要であるため現在、造膣術は行っていません。
価格は全て税別となります。
術名 | 料金(万円) | 麻酔方法 | 手術時間(分) |
---|---|---|---|
乳房切除 | 50 | 胸部硬膜外麻酔 + 静脈麻酔 |
120~240 |
乳頭縮小(男性様乳頭形成) | 20 | 笑気麻酔 + 局所麻酔 |
40 |
乳房皮膚切除 | 20 | 笑気麻酔 + 局所麻酔 |
60~90 |
睾丸摘出 | 20 | 仙骨硬膜外麻酔 + 笑気麻酔 |
30 |
陰茎陰嚢切除 | 50 | 腰部硬膜外麻酔 + 静脈麻酔 |
300 |
薬剤名 | 料金(円) |
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女性ホルモン注射(プロギノンデポー10mg) | 2,000 |
男性ホルモン注射(エナルモンデポー250mg) | 2,000 |
女性ホルモン内服(プレマリン0.625mg 140錠) | 4,000 |
男性ホルモン内服(エナルモン25mg 30錠) | 4,000 |
プラセンタ注射(胎盤エキス)1A | 2,000 |